紛争も和解も、人間が生きていく上での実践的な課題です。人間が社会的存在である限り、われわれは常に何らかの紛争とともにあり、その和解を実現することにより、安定した社会生活を実現しようと試みています。しかし紛争があることで、社会に内在する構造的暴力がうきぼりになる場合もあります。その場合、和解に抵抗し、現実の変革を求める運動を通じて、われわれは、よりよい社会へ向かう歩みを進めることができます。紛争を思想的・理論的に考察する意義は、単にその現実的な解決を志向するにとどまらず、和解と反和解の両極のうちに、よりよい社会のあり方を構想する点にあります。